「日本歯科医師会雑誌より抜粋」
特に女性で65歳以上の高齢者に、転倒して大腿骨を折ってそのまま動けなくなる人が多い。転倒と歯の本数、義歯の状態をしらべたところ、20本以上の歯を持っている人に比べて、19歯以下で義歯を使っていない人は転倒のリスクが2.5倍高くなる。
歯数が19歯以下の高齢者は20歯以上にくらべて要介護への移行リストが1.21倍と有意に高まる。
19歯以下で義歯を使用していない者は認知症の発症率が1.85倍であった。
歯の保存状況と腰、肩、上肢、下肢の痛みなどが関連している。
歯の喪失が野菜摂取量を減少し、炭水化物の摂取増加を招き、肥満の原因ともなり、肥満はインスリン抵抗性を発症した前糖尿病段階であることが多く、
インスリン抵抗性は動脈硬化の明らかなリスク因子であると言われている。
歯周病について
現在、内科領域においても歯周病は腎症、網膜症、神経障害、などの細小血管障害、大血管障害などの糖尿病合併症に加えて、十分なケアが必要な疾患の一つと考えられています。
糖尿病の重症化は歯周病に悪影響をあたえ、糖尿病患者は生体防御機能が低下しているため、歯周組織破壊が進行しやすく、治癒しにくいと考えられています。
重度の歯周病患者では糖尿病を発症する可能性が高いことは20年ほど前から明らかにされてきました。。
空腹時血糖126mg/dl以上、あるいは随時血糖200mg/dl以上、かつHbA1c6.5以上で糖尿病と診断され(HbA1cは過去1~2ヶ月のコントロール状態を反映している。)ますが、
インスリンの作用で血液中の糖が細胞内に取り込まれ、エネルギーを産生する原料として利用されますが、このインスリンが、分泌されているが効きにくくなっているのが2型糖尿病で糖尿病患者の95%以上を占めます。
近年の報告で注目すべきことは、歯周治療が2型糖尿病患者の血糖コントロールに明らかに影響を与えるという点です。
歯周組織各所で炎症性サイトカインが持続的に産生され、それらサイトカインが全身的にインスリンの作用を阻害するため、糖尿病が重症化しやすく、歯周病の重症化が糖尿病の血糖コントロールに悪影響をあたえると考えられています。
その因果関係の逆として、歯周治療による歯周組織の炎症の改善が、血糖値の減少に奏功することが示されています。